< 時の流れに福音を伝えし者 >

 

 

 

 

 

 

アフリカ編・第三話 動き出した二つの陰謀

 

 

 

 

 

 この日も私達は木星蜥蜴の攻撃を受け、

 パートナーのマイと共にエステバリスで出撃した。

 

 これまでは単純に無人兵器を無尽蔵に吐き出すチューリップからの質量攻撃が続いていたが、

 この前の囮戦法や戦力を二つに割る別方向からの同時攻撃など、

 最近ではいやに木星蜥蜴の攻撃が計画的になってきており、

 戦況はより緊迫したものになってきている。

 

 だけど木星蜥蜴に有効な作戦を考えるのは指揮官などお母さん達の仕事。

 パイロットである私は目の前から襲い掛かってくる敵を倒せばいい。

 本当にそれだけでいいのかってそう思う時もあるけど、

 今の私にはそれしか出来ることがないってことも自覚している。

 

 だから私は今もこうしてエステバリスを駆り戦っている。

 何時か戦いの終止符が打たれることを願って。

 

『クリス、いいわよ!!』

 

「OK!!」

 

 

 ドガァァァァァァンンンン!!!!

 

 

 私はマイが弱めた敵戦艦のフィールドを突き破り、

 動力部に右腕のクローで大きな裂け目を作っていく。

 そしてすぐさま戦艦から離脱すると裂け目から火の手が上がり、

 やがて爆発を起こして地上へと沈んでいった。

 

『クリス、次行くわよ。』

 

「ええ、でもシンジくん遅いな〜。」

 

 私は周りの無人兵器の攻撃を避けつつすれ違いざまにクローで攻撃を仕掛ける。

 そしてクローの届かない敵は旋回して私を追いかけてくる。

 

『そう言えばそうね、シンジくんならもう向こう側を倒しちゃってる筈だし。」

 

「うん、戦力もこっちと同じくらいだった筈だし。

 あ、マイ、準備いい?」

 

『いつでも!!』

 

 私は無人兵器を大量に引き連れマイの機体の方へと向かう。

 

 今回の戦闘も戦力を分断するという作戦で、

 シンジくんはもう一つのチューリップの部隊を殲滅しに行っている。

 その後にシンジくんがこっちに駆けつけてこっちのチューリップも破壊してくれる筈だった。

 

 

 ドゴゴゴゴゴォォォォォォォォンンンン!!!!

 

 

 そしてマイの一斉砲撃が発射され、引き連れた無人兵器は一気に破壊された。

 だけど、もうそろそろマイの弾薬も残っていない筈。

 

「マイ、残りの弾薬は後どれくらい?」

 

『アハハハハ、今ので打ち止め・・・』

 

「しょうがないわね、マイは弾薬の補充行って!!

 それまでは私が一人でなんとかするから。」

 

「ごめ〜ん。」

 

 マイはそう言って一時戦線からから離脱した。

 

「さてとマイが戻ってくるのが早いか、シンジくんが到着するのが早いか、

 それまで一人で頑張らきゃね。」

 

 ピッ!!

 

 そして私は再び無人兵器に向かって行こうとした時、通信ウィンドウが開いた。

 シンジくん!?

 

『クリスちゃん、戦闘中にいきなり通信ですまないな。』

 

「コウジさん、いきなり何なんです?」

 

 通信をしてきたのは私達の部隊の整備班長のコウジさんだった。

 

『それでシンジの応援なんだけど、もう少し遅くなりそうなんだ。』

 

「え!! どうしてです!?」

 

『実は運悪く向こうの戦闘区域の近くに眠っていたチューリップが二個もあってな、

 戦闘でその二個が目覚めて戦況がかなり不利になっちまったんだ。

 まあシンジがいるから負けることはないと思うが、

 こっちへ駆けつけるのはどうしても遅くなりそうなんだ。』

 

 そんな、シンジくんがいなきゃチューリップを落せないよ。

 

『そこでシンジに言われて俺が来た訳だ。

 まだ試作段階だが俺とシンジで作った新兵器をクリスちゃんに渡すようにってな。』

 

「シンジくんとコウジさんが作った、ですか?」

 

『ああ、と言っても設計はほとんどシンジなんだけどな。

 今輸送船で持ってきてるから一度こっちに取りに来てくれ。

 輸送船じゃこれ以上近づけないんだ。』

 

「わかりました、今そっちに行きます。」

 

 私はコウジさんに指定された岩場の影のほうに向かった。

 そこは戦場から少しはなれた場所で、行くと輸送船が着陸しコウジさんが手を振っており、

 その横にはカバーに隠された大きな物が船から下ろされていた。

 

『クリスちゃん、このカバーを外してくれ。』

 

 私は言われた通りエステバリスの腕でカバーを引き外すと、

 中に隠されていたのは大きなハンマーだった。

 それもエステの胴体くらいの大きさだった。

 

「コウジさん、新兵器ってこれですか?」

 

『ああ、一応これを俺とシンジはD・ハンマーって呼んでる。

 こいつは対チューリップ用の兵器だ、

 これならエステバリスでも理論上チューリップを落とすことが出来る筈。』

 

「理論上ですか?」

 

 なんだか妙に不安のある言い方ですね。

 

『さっきも言ったようにこいつはまだ試作品。

 問題も多くて量産なんてまだ出来る代物じゃないんだ。

 でも今のクリスちゃんには必要な筈だ。

 詳しいことは省くからこいつの使い方を説明する。

 見た通りこいつはハンマーだからチューリップに平たい面を打ち付ければいい。

 向きだけは間違えないでくれ。』

 

 このハンマーの形はよくある円柱に柄を取り付けた形だけど、

 片方の底面は綺麗に平たくされているがもう片方は少し丸みを帯びている。

 私はハンマーの柄を持って持ち上げるが、

 バランスを少し崩して機体が前に傾く。

 

「コ、コウジさん、ちょっとこれ重くありません?」

 

『それも問題の一つなんだ、話を続けるぞ。

 これを打ち付ける時のことなんだが、その前にこいつは少し充電が必要なんだ。

 ほんの十数秒だがその間ディストーションフィールドの出力が半分以下になっちまうから、

 敵の攻撃には十分気を付けてくれ!!』

 

「そ、それってすこしあぶなくないですか!?」

 

『それも欠点なんだ、だからこれを扱えるのは今はクリスちゃんだけだろうな。』

 

「どうしてです?」

 

『敵の攻撃を避け切れるスピードと技術を持っていて、

 なおかつそいつの重さを気にせずに飛行出来るほどの出力のある機体であること。

 その条件をクリア出来るのはこの部隊じゃクリスちゃんだけだ。

 まあシンジの機体でもクリアするだろうが、規格が違うし必要ないからな。』

 

 確かにシンジくんはそのままでもチューリップを落せるし・・・

 

『とにかく使用には十分注意してくれよ。』

 

「わかりました、何とかやってみます。」

 

 そしては私は両腕でハンマーを持って飛び立った。

 ハンマーの重みもあって飛行速度がいつもより遅いけど、

 これでも通常のエステバリスより十分速度はある。

 

     ドガァァン!!!      ドガァァン!!!

 

            ズゴォォン!!!      ズゴォォン!!!

 

 戦線に復帰すると共に無人兵器達の攻撃が私の周りを通り過ぎていく。

 両手は塞がってて迎撃出来ないし、ちゃんとチューリップまで行けるかしら。

 私は敵の攻撃の合間を何とか通ってチューリップに向かう。

 

 

 ピッ!!

 

 

『クリス、何処行ってたの。

 補充とっくに終わってるよ。』

 

 そこへ既に戦線に復帰していたマイから通信が入った。

 

「丁度よかった、マイ!!

 援護して、何とかチューリップの前まで行くから。」

 

『いいけど、チューリップまで行ってどうする気?』

 

「落すのよ、チューリップを。」

 

『ちょっと本気!?

 シンジくんじゃあるまいし、チューリップを落すなんで出来っこないわ!!』

 

 マイは私の言ったことを正気かどうか疑う。

 正直私がチューリップを落せるなんて私自身思っていない。

 でも・・・

 

「大丈夫よ、そのシンジくんとコウジさんが作ったって言う武器があるから。

 でも手が塞がってて敵の迎撃が出来ないのよ。

 だから援護がほしいの。」

 

『シンジくんが!?

 ・・・まあ、シンジくんだもんね。

 そんなものを作ってもおかしくないか。

 わかったわ、援護するからちゃんと決めなさいよ。』

 

「ありがと!!」

 

 私はスラスターの出力を上げて更に加速する。

 そして私の周りの無人兵器達が炎を上げて落ち始める。

 マイが遠距離から私の機体に近づく無人兵器を落としてくれているのね。

 落しきれない敵は何とか避けてチューリップへと近づいていく。

 

「チューリップまで後もう少しね。」

 

 私はコウジさんに言われた通りハンマーのエネルギーの充電を始める。

 

 

 キュウィィィィィィンンンン!!!!

 

 

           バチバチバチバチ!!!!

 

 

 ハンマーから機械音がすると共に、

 その周りに蒼い電気が漏れるように放電し始めた。

 

(ほ、本当に大丈夫なのかしら、このハンマー・・・

 使う前にドカン!!何てことないわよね・・・)

 

 更にその充電が始まると同時にエステバリスのフィールド出力が半分以下まで下がった。

 この状態でミサイルを食らったら、あっという間にフィールドが消えちゃうわ!!

 私は全神経を集中して敵の攻撃を避けながらチューリップに向かう

 

 そしてついにチューリップの横っ腹まできた。

 ウィンドウに表示されているハンマーの充電も完了と出ている。

 上手くいってよ・・・

 

 

 ドゴムッ!!

 

 

 私はハンマーを振りかぶってチューリップの表面に打ち付けた。

 

 

 ギュゴゴゴゴォォォォォンンンン!!!!

 

 

 ものすごい音が辺りに響き渡るが、私の見えるあたりには何の変化は見られない。

 そして蒼い電気を放っていたハンマーがついに火花を散らし始め・・・

 

 

 ドゴォォォォンンン!!!

 

 

 持っていた柄を残して爆発してしまった。

 その爆発で私はチューリップから吹き飛ばされる。

 

「え、ちょっと、壊れちゃったじゃない!!

 まだチューリップ落ちてない・・・のに?」

 

 その時浮いていたチューリップのだんだん降下を始めていた。

 もしかしたらさっきのハンマーの爆発で、なんて考えもしたけど、

 その程度の爆発でチューリップを落せる筈はないわ。

 だけど、ハンマーの爆発で舞い上がっていた煙が晴れたとき、

 打ち込んだ場所にはハンマーの底面の幅より少し小さな穴が空いていた。

 

 そして、チューリップが完全に地上へ墜落したとき、上空からそのチューリップの全容が見えた。

 チューリップには私がハンマーを打ち込んだ反対の部分に巨大な穴が空いていた!!

 その穴で私はなにが起こったのか、事態をなんとなく把握した。

 おそらくあのハンマーのインパクト時に何かがハンマーから打ち出され、

 それがチューリップの中を突き抜けたのだと。

 

『クリス!! やったじゃない!!

 チューリップを落したのよ!!』

 

「え、ええ・・・」

 

『この調子で残りの敵も倒すわよ!!』

 

「う、うん・・・」

 

 私はチューリップを落せた驚愕がまだ抜けないまま、

 再びマイと共に無人兵器の殲滅に向かった。

 

 そして、シンジくんがこの戦場に応援に来る頃には、

 既に敵の九割が破壊され私達の勝利が確定していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ディストーション・ハンマー?」

 

 クラウリアさんがチューリップを落したD・ハンマーについて聞いてくる。

 

 戦闘が終わり一段落が着いた後、クリスさん、マイさん、クラウリアさんは、

 僕の部屋でお茶を飲みながら、僕とコウジさんからD・ハンマーの説明を受けていた。

 

「そうです、ディストーション・フィールドを防御にではなく武器に転用したものです。

 ディストーション・フィールドを内部に溜め込み、

 ハンマーを打ち込むと同時に圧縮したフィールドを打ち出すことで、

 チューリップ内に入り込んで圧縮したエネルギーを開放し内部から破壊する武器なんです。

 D・ハンマーと言うのはディストーション・ハンマーの略です。」

 

 僕はD・ハンマーについて簡単に説明をする。

 

「で、でもシンジくん、そのD・ハンマー、チューリップに打ち込んだ後壊れちゃったんだけど・・・」

 

 クリスさんが少しオドオドしながら壊れてしまったことを話す。

 

「それはしかたありません。

 なにせ試作品だったんで強度面でもまだ問題が解決してなかったんです。

 打ち付ける衝撃で壊れるとは予想してましたから。」

 

「そ、そっか・・・」

 

 クリスさんはそこで安堵した顔をする。

 壊してしまったことを追求されるのではと思ってたのかな?

 

「だから言ったじゃない。

 シンジくんはそんなことくらい気にしないって。

 それよりほらこの茶菓子、すごくおいしいわよ。」

 

「そお?・・・あ、ほんと、おいしい。」

 

 クリスさんがマイさんに茶菓子を一つ手渡されて食べると感想を述べる。

 

「喜んでもらえて嬉しいです。

 そのお菓子、一応自家製なんですよ。

 洋菓子は作ることよくあったんですが、

 和菓子ってのはあまりなかったんですけど。」

 

「え、このお菓子もシンジくんが作ったの!?」

 

「さっすがシンジくん、何でも出来るのね!!」

 

 

「オホン!!!」

 

 

 そこへクラウリアさんが咳払いをし、クリスさん達の口が止まる。

 ちょっとはなしが脱線しちゃってたね。

 二人もちょっと気まずそうな顔をしてクラウリアさんをみる。

 

「でも、ディストーション・フィールドの武器への転用なんてよく思いついたわね。」

 

「そうでもありませんよ。

 フィールドの武器転用自体は僕が考えたんじゃありません。

 ナデシコでフィールドを収束して剣にする装置を作った人がいたんですよ。

 それでフィールドを他の武器も応用出来ないかって作ったのが、

 このD・ハンマーだったわけです。」

 

「ならその装置を含めて軍に配備することは出来ないかしら。

 その武器があればこの戦いの戦況が大きく変わりえるわ。」

 

 クラウリアさんが期待を膨らませていうが・・・

 

「それは現段階じゃあ無理だと思いますよ。」

 

 それに答え期待を断ったのはコウジさんだった。

 

「どうしてです?」

 

「D・ハンマーは強度の問題もあるのですが、

 それ以上にその扱い方がさらに問題があるんですよ。

 クリスちゃんにも言いましたがD・ハンマーは充電中フィールドの出力が著しく低下します。

 チューリップを落すほどの力を内包する以上、

 どれほど強度があっても長時間フィールドを溜めておくことが出来ないのです。

 その為、やむ負えなく直前に充電をしなければいけないので、

 フィールド出力が低い状態でチューリップを取り囲む無人兵器の真っ只中に飛び込む事になるのです。

 今回はクリスちゃんとマイちゃんの援護が会ったから落すことが出来ましたが、

 普通のパイロットでしたら自殺行為に近いものです。

 だからD・ハンマーを使えるパイロットは今のところクリスちゃんしかいないんですよ。

 それにシンジの言いましたフィールドを収束する装置も同じような物でしょう。

 多分それを使えるパイロットはほとんどいなかったんじゃないか?」

 

 コウジさんはD・ハンマーの問題を簡単にクラウリアさんに説明し、

 さらにはD・F・Sの欠点まで明確に言い当て、僕に確認をした。

 さすがですねコウジさん。

 クリスさんとマイさんの機体をカスタムしただけのことはあります。

 

「コウジさんの言う通りナデシコでもその装置・・・D・F・Sと呼んでいますが、

 それを使えたのは一人しかいませんでしたよ。

 それも収束のコントロールはIFSで常に維持しないと消えてしまうので、

 戦闘と平行して行うこと自体難しくて他のパイロットには無理だったんです。」

 

「軍への配備はこれからの改良しだいってことです。

 それにあの試作品を作るのに部品が全て特注でしたから、

 戦艦一個近くの金が掛かりました。」

 

 

 ごほっごほっ!!!!

 

 

 それを聞いてクリスさんとマイさんが食べてたお菓子でむせる。

 

「シンジくんにヨシカワくん、もう少し費用を抑える事は出来なかったの?」

「そんな・・・私・・・戦艦分のお金の物を壊しちゃったの・・・」

「無茶言わんで下さいよ。

 シンジの設計図がほとんど完璧だったからそれだけで済んだんですよ。

 もし俺一人で設計してたら設計ミスが必ず幾つか出て費用が二倍三倍になってもおかしくなかったんっすから。

「き、気にすること無いわよ、クリス。

 シンジくんも別にかまわないって言ってたじゃない。」

「そうですか、それほどなのなら仕方ありません。

 でももしあなたでも失敗してたら特別費用も打ち切られて問題になってたかもしれませんよ。」

「う、うん・・・」

「脅かさんで下さいよ、隊長!!」

 

 後ろのほうでクリスさんが落ち込んでるみたいだけど、

 マイさんが慰めてくれているみたい。

 

「あ、あの・・・クラウリアさん。

 今言った特別費用って何のことです。」

 

 そしてマイさんが話をずらそうとクラウリアさんに聞く。

 

「あら、マイちゃんは知らなかったの?

 あなた達の機体をカスタムしたのはヨシカワくんでしょ。

 その機体であなた達が予想以上の功績を上げたことで、

 ヨシカワくんに兵器制作に関してある程度特別費用が出るようになったのよ。

 でも、戦艦一隻分の費用はある程度を超えてます。」

 

「そうは言いましてもねえ、隊長。

 戦争なんですから大量の金が動くことは仕方ないでしょう。

 戦艦一隻分の金なんかマイちゃんの機体の弾薬を20回も使いきれば無くなってしまう程度ですよ。」

 

「え?」

 

「確かにそれくらいはしますが、それとこれは別です。」

 

「ええ!?」

 

 クラウリアさんも認めたマイさんがその事実の驚きの声を上げる。

 

「まあ試作品は作りましたから部品の量産はもう出来ますし、

 後は改良を続けるだけですから、今後はそれほど費用は掛からないでしょう。

 それでも壊れちまいましたから一から作り直しですけどね。」

「そ、そんな・・・私、戦闘ではいつも弾切れ起こしてる・・・」

「また作るにはどれほどの費用が掛かるのです?」

「私・・・今まで何回弾薬使い切ったけ?・・・」

「そうですね、おそらくエステバリス2・3機分と言ったところですかね。」

「じゃあ、私の使った弾薬の総額って・・・」

「それくらいでしたら、まあ認められる金額ですね。」

 

 クラウリアさんとコウジさんが費用についてのお互いの妥協点を見つけている中、

 マイさんはクリスさんと一緒に落ち込んじゃっていた。

 そこへ・・・

 

 

 ピンポ〜ン!!

 

 

「あのすみません、カエデですが・・・」

 

 僕の部屋の呼び鈴が鳴り、ミズキさんが尋ねてきた。

 

「あ、ミズキさんですか?

 どうぞ、中に入って下さい。」

 

 

 プシュー!!

 

 

 そして扉が開きミズキさんが中に入ってくる

 

「今、丁度皆さんでお茶会をしていたところなんです。

 ミズキさんも一緒にどうですか?」

 

「あ、ありがとうございます、シンジくん。

 ご、ご一緒させて頂きます。」

 

 そう言うと、僕は座布団を敷いてミズキさんがそこに座った。

 そしてミズキさんのお茶を注ぐ。

 

「それでどうしたんですか?

 この部屋に来たということは何か僕に用があったのでは?」

 

 僕はミズキさんの前に湯飲みを置きながらいう。

 

「あ、そうでした!!

 実は副司令がシンジくんに副司令室に出頭するようにとのことです。」

 

「副司令が!?」

 

 それに驚いたように答えたのはクラウリアさんだった。

 クラウリアさんは複雑な表情で考え込む。

 

 

 

 そしてこれがこれから起こる事件の全ての始まりだったのかもしれない・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

その二へ続く